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稲尾和久
 元西鉄(現・西武)の大投手・稲尾和久さんが亡くなられた。
 悪性腫瘍による急死という。
 沢村賞選考の際、彼が欠席していたのは知っていたが、
 先月末から体調を崩して入院していたとは。

 稲尾和久さんは、昔の野球史を語る上で、最も欠かせない選手だ。
 打者では“左の王、右の長島”とされるように、
 投手では、“左の金田、右の稲尾”。
 このように称される4人の内、一人が伝説に消えた。

 61年のシーズン42勝という記録も信じがたいものだが、
 彼を輝かせているのは、58年の日本シリーズ。
 このシリーズで、彼は、

 6登板、5連投、4完投(2連続完投2回、1完封)、4連勝

 という驚異的な活躍をしている。
 5連投、もしくは4連勝(南海の杉浦も記録している)だけならまだしも、
 完投を4回もしているのだから、恐れ入る。
 
 「神様 仏様 稲尾様」

 今でも何かにつけて、誰かをこのように呼んだりもするが、
 この呼び名が一番似合うのは、稲尾和久さんしかいないだろう。
 
 通算勝利数は276だが、もしも故障さえなければ、
 金田正一の400勝を凌いだ事は間違いない。
 それどころか、サイ・ヤングの500勝にも到達しただろう。
 短い野球人生を鮮やかに駆け抜けた超人。
 実人生もまた、炎が激しく燃え上がるが如く駆け抜けてしまったか。
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